萌黄の騎士




<―――闇に閃くその白刃は、金の蔓を象りし太刀―――>



<―――緋の鞘を持つ御佩刀は―――>



電童本vol.1 「萌黄の騎士」  





<―――彼に残された、唯一の『過去』。>




 堕ちる身体。
 
 止まる音。

 流れる衝撃。

 響く声。

「―――――電童!!!」
 全てが奈落に吸い込まれる中、ただ一人昇る―ベガ。
 愛しい妹が自分を見ている。
「兄上ぇ―っっ!!!」
 そう呼ばれる事など許されぬ自分を、それでも呼んでくれた妹は、きっと電童が守ってくれる。
 あれに乗るのは、妹の息子なのだから―――――

 もう見えない遥か高み―――朱色の炎を見つめながら、アルテアは自らの意識も又、急速に堕ちていくのを感じていった・・・。  



 声が、聴こえる。
 自分を呼ぶ声が。

『あにうえーっ!』
<忘れるのだアルテア・・・・忘れるのだ>

『べガーーーーっ!』
<べガは私が守っている・・・案ずるな>

『ベガ・・ッ!!?』
<案ずるなアルテア・・・>


 
 ラゴウの一件の後、私は再び螺旋城に戻ってきた。
 目的は電童の奪取と、七つめのデータウェポンの回収。
 私はアルデバランの艦橋で戦線を離れてからのデータのチェックをしていた。
 特に、未確認のデータウェポンの合体現象を。
「・・・・・・輝刃、か・・・・・。」
 先の三将・ウィッターと電童の戦いを見ながら私は、輝刃の姿を成す二体の データウェポンの内一体でも抑えてしまえば後は事足りると 判断し、二体の機士を引き連れて凰牙を駆り出撃した。

 そして、再び出会った。
 妹に。


<案ずるなアルテア・・妹は私が守っている・・>

(そう・・べガは、妹は陛下に守られていた・・はずなのに・・っ)

『あにうえーーーっ!!』/「兄上ぇーーーっ!!」

 炎の中を走る自分。
 遠ざかる妹。
 自分に向かいを手を伸ばし、助けを求めながら叫ぶ。
 
 囚われた妹が自分を呼ぶ。
十七年の時を経て成長した妹が。
 ベガを捕らえているのは誰だ?
 妹を奪うのは・・誰だ?


奈落に堕ちながらアルテアは、自らの記憶を拾い集める。
 それはさながら走馬灯・・・・



(良き未来・・・我らとて、願ったものはただそれだけであったのに・・・ベガ・・)
 久しぶりの対電童戦、その中で私の策を阻んだのは・・・悲しくも予想どうり、妹ベガだった。
 永い時を隔て、やっと会えた妹は・・・哀れにも記憶を操られ、我らガルファの敵となっていた。
 髪も瞳も、色は変わってしまっていてもなお昔の面影を宿すその姿。
 其れゆえに、私の心に底知れぬ怒りが込み上げてきた。
 自分たちを引き裂いた者達に。
 大切な家族を血に汚す者達に。
「チッ…ここでは話もできぬか…許せよ」
 ドスッ!
「…っ!」
 当て身で気絶させると、ベガを抱えて凰牙へと戻る。
 これ以上の長居は無用。
 私は凰牙を飛ばし、アルデバランへと戻った。


 目覚めたベガは予想に違わず、激しく私に動揺し、そして反駁した。
「兄上何を……!?」
 信じられぬものを見る目で自分を見る、あの優しく美しい翠の双眸。
「らちが明かぬのはわかっている。今、真実を話したところで”そうではない”と教えられ育ってきたお前には、すぐには信じられぬであ  ろう。」
「兄上!!真実は!!!」
 言い募る妹のその心の中には、私こそ誤っているとの思いが渦巻いているのだろう。
 だが、そんな心がわかっても嬉しくも何ともない。
(なぜ・・こんな言い合いをしなくてはならない・・・なぜ、肉親があい争わねばならぬ・・!!)
 そして今の私には、私事に心を煩わされている事は許されない。
 陛下の為に電童と七つめのデータウェポンを、なんとしても手に入れねばならぬ。
 それが私の使命。
 そして、その手がかりを持つは目の前の可愛い妹なのだ。
「やはりお前が持っているのだな。七つめの手がかりを!!」
「いえ、知りませぬ!!」
「兄に渡すのだそれを!」
(渡してくれ・・・!)
「お前の過ち、取り返しのつかぬものにせぬ為にも!」
(もう、お前と争いたくはないのだ)
 祈るように私は願う。
 今ならば・・・と。
「―――ベガ!!」
「たとえ知っていたとしても、今の兄上になどお渡しする事できませぬ!!!」
「何!?」
 翠の双眸が自分を映す。
 明確な拒絶と、強い意思をもって相対する。
(何故だ―――)
「誤っておられるのは――――」
(何故わからぬ――――)
「騙されておられるのは―――」
 理解を得られぬ事に、抑えようとしても苛立ちがつのる。
「――――兄上の方ではありませぬか!!!!」
「ベガ!」
「なんと申されようと、兄上のその記憶真実ではございませぬ!!!」

 パンッ!

「…お前こそまだわからぬか!?」
「……っ!!」
 床に倒れた妹が、瞳に力を込めて自分を射抜く。
 私はその視線を、自分の右手を押さえたままで受け止める。
 ―――まさか、妹に手をあげるような事になろうとは―――!!!
 ギリッ・・と歯の鳴る音は自分だけに聞こえただろうが、苛立ちは隠しきれない。
「もう良い!ならばもう聞かぬ!――我らをこのような運命に堕としたもの全て、破壊してくれるわ!!!」
「兄上!!」
 言い捨てて踵を返すと、機獣どもに部屋の見張りを命じて私は部屋を出る。
 そしてその足でまっすぐ凰牙へと向かった。
 目指すは地球。
(・・・あの星の者どもが・・すべての元凶・・・!!)
 部屋を出る時にかけられたベガの叫びが、頭の芯に残っている。
 その反響が又、怒りをふくらませる。
(―――滅ぼす!)
 かつて無いほどに怒りにかられて、私は凰牙を駆った。


 現れた電童は以前よりも強かった―――が、まだまだ荒削りで未熟だ。
 しかし技量よりも、聞こえてきた電童のパイロットの叫びが私を襲った。

「母さんを返せ!」
「―――何!?」
 一瞬、意識を奪われる。

(――――――母―――――!?)

「ベガの息子・・・お前が!?」
 電童が加速する。 
 ガオンッ!!!
「わああああああっ!!」
 突っ込んでくる電童にブルホーンでカウンターを喰らわせ、吹っ飛んで倒れた所にバイパーウィップを突きつけて自由を奪う!
 身を起こしかけた電童の動きが凍りつく。
 相手の眼前に左拳を向けたまま、私は思わず口走っていた。
「ならば母に教えられてか!お前達が戦うはこの宇宙の平和の為と!?――故の戦いか電童!!」
 十七年前に味わった怒りと悲しみ、家族を奪われた絶望が私を狂ったように饒舌にさせた。
 言葉が止まらない―――――!
「そうまでして戦乱を呼ぶか!?そうまでして血を好むか!?・・愚かな人間ども!!」
「電童が戦えばこの宇宙に未来永劫平和は訪れん!・・・・騙されての事とはいえ、己が息子までをもそんな闇に堕とすか―――ベガ!!!」
 アルデバランとの回線を開く。
《・・・北斗!銀河君!》
「母さん…母さんを返せ………っ!」
 なおも聞こえる電童からの声に―――私の中の抑制が飛んだ。
「……ベガはアルクトス星紀4085年の戦いの折、生き別れし――――――我が妹。」


 一瞬ならず、戦場が凍る。


《・・・っ兄上っ!!!》
 開きっぱなしだった回線から妹の叫びが響く。
 だが私の感情を止める事はできない。

(返せ・・・家族を!・・・私にベガを、ただ一人残った妹を返せ・・・!!!!)
 私の心にはその言葉しかなかった。
「……敵に攫われ、我らガルファこそが宇宙に仇なす者と教えられ、この戦いに身を投じた愚かな妹ぞ……」
「その言葉信じ電童が戦えば、もはやこの宇宙、戦乱から救う術は無い!」
《違う!違うわ!!――北斗!銀河君!》
「ベガをそのようにした者こそが真の敵!――これ以上過ちを犯すな電童!
 ―――ベガの息子よ!このままではお前達こそが、全宇宙に戦乱を呼ぶ真の破壊者となろうぞ!!!」
《兄上っっ!!!》
 アルデバランより、妹の絶叫が届く。
 かろうじてその叫びは、私の暴走を止めた。

(パイロットは・・・ベガの息子・・・妹の家族・・・もしここで殺さねばならなくなれば・・・私があやつらと同じ事をベガに・・・)

 その痛みは、自分自身が骨身にしみて知っている。
 できる事ならば・・・
 だが彼らが拒むのなら、ガルファの黒騎士として私は・・・・・!!!
 陛下への忠誠と家族への思いが、私の中でせめぎあう。
 
 そして―――

 パアァァァッ!!!!

「――――――!?」
 逡巡する間に突然四つの光が現れ、そして四体のデータウェポンとなる。
(これは・・・・ふっ・・そういう事か・・・)
 どうやら向こうは事態を把握できていないようだ。
 契約者の戦意の消失により、データウェポンとの契約が絶たれたことを。
 「―――パイルセーブ!」
 この機を逃す手はない。
 「戦う意思無き者の元に、データウェポンは留まらぬ……ようやくわかったようだなお前達にも!」
 私はギアコマンダーをかざす。
 今、全てのデータウェポンを手にする事ができるならば、これ以上血を流すことをしなくても済む。
 パイロットまで手にかけなくても――――――――
 殺さずとも――――――
 電童を破壊するだけで――――――――――
《―――兄上!!いえ、アルテア!!!》
 ベガの三度めの絶叫が聞こえたのは、凰牙がセーブしたユニコーンを電童に向けたその時だった。



 結局、それ以上の戦闘は無かった。
 ユニコーンドリルを突きつけて、電童の放棄を迫ったのだが・・・
(・・・ベガ・・・!)
 舌打ちしたいのを抑えて、アルデバラン内のベガを軟禁してある部屋に向かう。
 あの時―――――電童に手を出していたら、ベガは間違いなく死んでいただろう。
 武器となる物は全て取り上げたと思っていたのに、まだ髪に針を隠し持っていて、それで自害を図ったのだ。
 電童を破壊すると―――討つと言うのならば、七つめのデータウェポンの手がかりたるこの身もろとも今、ここで消し去るのみ―――
 そう叫ぶ妹の本気を悟り、退かざるを得なかったのだ。
「……………」
 無言で対峙する自分とベガ。
「渡してもらおうか…さっきの針を」
「…………」
 私の求めに応じ、針を渡したベガはそこではじめて口を開いた。
「これで、やがては導かれるというか。平和で穏やかな日々に――」
 前後左右を見張りに囲まれながらも、その目は小揺るぎもしない。
 強く告げるその言葉に、かつて在った日々が脳裏に浮かぶ。


 青い空には、穏やかに輝く太陽。
 暖かな陽射しの下には、美しく繁る草木。
 流れる川と吹き行く風は、静かでいてとても優しかった。
 そんな日は二人で外によく出て行って、日向ぼっこをしていた。
『あにうえっ!』
 よく、自分が草の上に寝転がって本を読む傍らで、妹は花冠を編んで見せてくれた。
 アルクトスの色鮮やかな草花で。


 ズキンッ!!!!


「……っふっ!!」
 急に襲ってきた痛みに、頭を割り砕かれるような衝撃を受ける。
「それは……っ……人の……っ!!」
 ベガの言葉に答えようとするがうまくいかない。
(またかっ・・・!)
 記憶の封印が解かれてからも頻繁に自分を襲う痛みは、いまいましいことこの上ない。
「ちっ……もう良い!連れて行け!本星移送の準備なるまでしかと見張れ!」
 手を振り痛みを振り払うと、兵にベガを連れて行くように命じる。
「……兄上、私は信じている。―――人の持つ、本当の力を。」
 去り際に告げられた妹の言葉だけが、私に残った。


【本船に向かって飛行する物体・二/一つは電童と判明】 
「何?」
 アルデバランの報告に、私は艦橋のモニターを見やる。
 はたして、確かにそこには電童の反応が。
「何をわざわざ…迎え撃て!今度こそ終わりにしてやる!」
 思索の淵から意識を引き戻し、私は凰牙の元に向かった。
 
「ここまで来たその心根は褒めてやろう……が、それで勝てると思ってか!?」
 相手は丸腰同然のGEAR。
 が、手向かうならば容赦はできぬ。
 ギュアアアアアッッ!!!!!!
 ギィンッ!!!!! 
 素手の電童を蹴り飛ばし、四体のデータウェポンを呼び出して電童の相手をさせる。
 と―――――不意に背後からビームの束が。
「なっ!?」
「凰牙に援軍!?」
 違う。
 振り向いたその先には、螺旋城の機獣達と――――三将・グルメイの姿が。
「こっ………これは――――螺旋城め!!!」
 奴の意図を察し、思わず私は歯噛みする。
(どさくさまぎれに、電童もろとも凰牙まで始末する気だな・・・追い詰められた無能者の考えそうな事だ!)
 そして――― 
 ビッ!!!
 ―――――飛来した一条の閃光が、アルデバランの――――ベガの居るアルデバランの中枢を貫く!!
「ベガ!!!!」
「母さん!!!!」
 期せずして、互いのコクピットに互いの叫びが響いた。

(アルデバランが沈む―――!?)
「おのれあやつらっ……!!!」
 こうなっては電童にかかずらっている場合ではない。
 急ぎデータウェポン達を引き戻すと、私は一直線にアルデバランへと戻った。
(ベガ・・・!!)
 ほどなくして船に着くと、すぐに艦内の状況を伝えさせる。
「捕らえてある者は?」
 声に応え、移動する私の右手にウィンドウが現れ―――
「……っ!」
 私は息を呑む。
【モニタリング不能・生死確認不能】
 そこには半壊した部屋の中、倒れ伏す妹の姿があった。

 ズキィッ!!!!!

 あの痛み――――頭を割り砕かれるかと思う、あの激痛。
 
 白光の中、浮かぶ記憶。
 炎と、死と、別れの記憶。

 倒れ伏すベガ。
 とりまく炎。
<忘れるのだ―――忘れるのだアルテア>

『あにうえぇぇっ!!!』
『ベガァ―――っ!!!』

 水に浮かぶ人影。
 とりまくのは電子の煌めき。

 叫ぶのは青柳の髪の少女。
 とりまくのは無数の機械の残骸。

 叫ぶ妹と、凰牙を駆る自分―――――繰り返し浮かぶその光景。

「あの折の記憶・・・こうもまざまざと有ろうとは・・・」
 アルデバラン内を走りながら、苦い思いを噛み締める。
「ベガ・・・・・」
 愛しい妹の名を、何度口にしただろうか。
 既視感に追い立てられるように、私はただひたすらにベガの居るはずの部屋へと走った。

 駆ける自分。
 炎と瓦礫の中を。
 あの時も。
 今も。
 妹を求めて。

 ドンッ!!!!!
「ああああっっ!!!」
 爆発音と――――声!
(―――――あそこかっ!!?)
 道をふさぐ瓦礫を飛び越え、声のした部屋へとたどり着く。
(――ベガ!!)
「放してっ・・・・・兄上ぇぇぇっ!!!」
 絶叫――――機獣に捕らわれた、妹の声――――


 その瞬間。

「―――っ!!!?」
 頭蓋を貫く激痛が、記憶の堰を消し飛ばす―――――
「ああああああああ――――――――――っ!!!!!!」


 ドンッ!!!

 光る――――そして消えていく都市。
 遠い空と山に、橙色の爆光。
 禍々しくも強い死の太陽が、すべてを焼き尽くし、滅ぼしていく――――――
(誰がこのような惨劇を引き起こした――――誰がこのような破壊を行った!?)

<あれは人々の争いの火・・・己が欲望のために築き・・・果てはすべてを滅ぼす・・・>
/<フハハハハハッ!!愚かでちっぽけな人間どもめが!>


<もはやどうすることもできぬ・・・アルテアよ、人々の争いによって、おまえの星は滅びた・・・>
/<水も星も光も大地も、すべてを支配するは我ぞ!

我無くば生きてゆくこともできぬ人間共!!

――――――我こそは星の王――――――

いや、全宇宙の王ぞ!!!!>

「―――――っぐあああああっ!!」
 焼ききれんばかりの記憶の奔流に、狂ったように私は叫ぶ。

 凰牙から飛ばされる自分。
 白く染まる視界のなかに、灼き付けられたかのように鮮やかな日々が滲む。
 守りたい。
 あの穏やかな時を。
 仲間を、家族を、――――私の星を。
 だからこそ、私は凰牙のパイロットになったはずだった。

 陽は優しく降り、
 水は淘々と流れ、
 風は木々を鳴らし、草原を走る。
 群れをなす鳥が空を滑り、
 雲は地上に陰を映した。
 木陰で涼む人々の、その傍らに、恐れ気もなく寄ってくる動物たち。

 ・・・・鮮やかに、よみがえる。
 二度と戻れぬ、遥かなアルクトスでの思い出――――そして滅びた星の、その事実と過去。

「・・・・・・私は・・・・・」
 ようやく―――ようやく私は悟る。
 ベガの言葉こそ正しかったと。
 操られ、誤っていたのは・・・私だったのだと。    



 堕ちる身体。

 止まる音。

 流れる衝撃。

 響く声。

「・・・・・・・・・助かったのか・・・私は・・・」
 暗い闇と燃えさかる炎の中、アルテアは身を起こす。
「・・・・・・ブルホーン・・・・・・バイパーウィップ・・・・・・お前達が助けてくれたのか?」
 あの高さから落下して、偶然瓦礫も炎も無い所になどにいられるわけが無い。
 見上げるとそこには、実体化した二体の姿が。
(傍に、居てくれたのか・・・心無くした私の元に)  
 その事が、萎えかけたアルテアの心を瞠目させる。
 自分でないときにセーブしたデータウェポン達。
 求める心の持ち主を、自ら見出して契約を結ぶかの者達――彼らは戦う意思を持つものの元にしか留まらない。 
(私は―――まだ戦える。まだ―――死ぬことはできない。)
 留まる二体が教えてくれる。
 ここは戦場。
 自分は凰牙の主。
 ・・・私の中には、記憶を封じられてもなお変わらなかった意志がある。

≪良き未来・・・願ったものはただそれだけだった・・・≫

 そのために今できる事。
 そのために今為すべき事。
 ――――電童に助力し、これ以上のガルファの侵攻を止める。
 それは同時に、私の贖罪の唯一の方法でもあるのだ。
 なにより、今ここで死んだらまたベガを泣かせてしまう。
(もう誰にもそんな思いはさせない・・・!)
「ブルホーン!バイパーウィップ!―――凰牙へ戻るぞ!!」
 呼びかけに応え、二体がギアコマンダーに戻る。
 微かに感じた波動がまるで二体の笑いのように感じる。
 それでこそ我が主―――そう、告げられた気がした。


 そしてアルテアは地球へと降りる。
 その顔には――――もう、仮面は無い。




「萌黄の騎士」 ――終――




萌黄の騎士
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