まどろむ意識の中で、はねるような少年の声が聞こえる。
誰かを呼んでいるようだ。
目を凝らしてみても誰も――何も――見えない。
いや、それよりも目を開けてるのかもわからない。
意識を”外”に向けようと集中してみる。
光が近づいてきた。
ゆっくりと自分に向かってやってくる。
光の中に美しい少女が花冠を掲げていた。
懐かしさを覚えて少女に声をかけようと試みるが、
声は出ず、ただ空に手を伸ばすだけになった。
光の中に入るとそこは懐かしい草原だった。
青々とした草木が茂り、色とりどりの花が咲く、
懐かしい場所。
ふと、背後から先ほど聞こえたはねるような声がする。
少女の名前を呼んでいる。
―――――「ベガ」―――――
と。
ベガと呼ばれた少女がこちらを向いた。
知っている。
かつて愛した。
愛しい妹。
背後から少年が飛び出し、少女と抱き合う。
知らずに涙が溢れる。
なぜ忘れていたのだ!
あれほど愛していたのに!!
わたしの罪か?
わたしの美しくも愛する者達を守れなかった
わたしの―――罪―――。
目の前の風景が消える。
暗闇で抱きあう兄妹。
涙でぼやけ、消えてゆく。
取り返しのつかない罪に胸が張り裂けそうになる。
誰か―――――――――――。
やさしい子守唄。
心が癒されていく。
再び光が近づいてくる。
先ほどとは違う。
近づいてくるのではない。
少女の面影を残した、女がわたしを見つめる。
子守唄が止み、唇が別の形に動いた。
―――――兄上
愛するものをみまちがうことはない。
それは確かにわたしの愛するものだった。
もう一度唇が動く。
兄上―――――――!!
とめどない涙が溢れ、くしゃくしゃになった。
その涙を止めようと手を伸ばした。
女はしっかりとその手を取り、声をあげて泣いた。
妹よ―――――。
私を・・・・・・私を・・・。
―――――『ベガ』――――――
搾り出すようにささやくと、世界が変わった。
静かに、星が瞬いた。
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